大塚商会様|「導入するか」で悩む時代は終わった―Claude Code時代の人材育成
生成AIの進化は、もはや「チャットで質問する」段階をはるかに超えています。「AIエージェント」、そして「バイブコーディング」——自然言語でAIに指示して業務やソフトウェア開発を行うスタイルが、いま急速に広がりつつあります。
そんな中、まだ国内での組織導入が進んでいないと言われているClaude Code(クロードコード)を用いたバイブコーディング研修に、いち早く踏み切ったのが、ITソリューションの大手・大塚商会です。
今回お話を伺ったのは、経営支援サービスとAIビジネス推進を統括される山口様(上席執行役員)と、トータルソリューショングループTSM課でAIビジネス推進を担う三上様。“経営層”と“現場の推進者兼受講者”という二つの立場から、なぜ今この研修に踏み切ったのか、その背景を伺いました。
お二人の役割:“モノを売らない”特殊部隊で、AIビジネスを推進する
インタビュアー(以下、スパルタ):
まずは自己紹介と、現在のご担当業務について教えてください。
山口様(経営支援サービス 兼 AIビジネス推進プロジェクト 上席執行役員):
大塚商会の山口です。現在はAIビジネスの推進と、経営支援サービスの旗振りを担当しています。所属するトータルソリューショングループは、社長直轄で立ち上げられた、少し特殊な成り立ちがあります。モノを売ることに命をかけてきた営業に、「もうモノは売らなくていい。その代わり、お客様に価値あるものを提供しなさい」——そういうミッションで始まった組織なんです。今は、ITだけでは解決できない経営課題を、外部の中小企業診断士とアライアンスを組んで解決したり、大塚商会が早い段階から蓄えてきた社内のAI活用ノウハウを外販する、といった取り組みをしています。
※補足
TSM(トータル・ソリューション・マスター)は、社長直轄の営業組織です。現社長が就任した2001年に、トップセールスのメンバーを集め、会社の予算や売りたい商品にとらわれず、お客様への貢献を最優先に活動する組織として設けられました。現在はトータルソリューショングループTSM課へ改組し、お客様の経営課題を本当に必要なソリューションで解決するというミッションは変わらずに、お客様に寄り添った営業活動を行っています。
三上様(トータルソリューショングループTSM課 / AIビジネス推進):
同じくトータルソリューショングループTSM課の三上です。お客様へのAI活用推進やコンサルティングを、技術営業の形で担当しています。
TeamSpartaとの接点:「あの会社なら、対応してくれるはず」
スパルタ:
三上様がTeamSpartaと初めて出会ったきっかけを教えてください。
三上様(AIビジネス推進):
以前、別の職場で営業企画に関わる仕事をしていた際、社内でPythonや生成AIを使って業務効率化できないかという話があり、ちょうど展示会でTeamSpartaさんのブースに立ち寄ってお話を聞いたのが、一番最初のきっかけです。
スパルタ:
当時の研修はいかがでしたか?
三上様(AIビジネス推進):
受講したメンバーからは、総じて非常に良かったと聞いています。Pythonと生成AIを活用しながらコードを書いていく形の研修で、少人数でしたが、短期間で実務に使えるアウトプットを出すものでした。実際、今でもそのメンバーはPythonを駆使して業務効率化をしていると聞いていますので、非常に効果のある研修だったと感じています。
スパルタ:
今回、大塚商会様で研修を検討される際、再びTeamSpartaにご連絡いただいたのはなぜだったのでしょうか?
三上様(AIビジネス推進):
決め手は、大きく2つあります。1つは、やはり“実務に即している”こと。他社では座学が中心になりがちですが、TeamSpartaは実務に直結している点が大きな要因でした。もう1つは、実務に即しつつ“短期間”で成果を出せること。名前の通りスパルタですが、前回の経験からも、そこは強く実感していました。複数社を比較検討しましたが、最終的にはメンバーが実際に手を動かせるという点を最も重視して選びました。
なぜ今、Claude Code/バイブコーディングなのか
スパルタ:
今回、Claude Code研修を導入された背景を教えてください。
山口様(上席執行役員):
生成AIの進化は、非常に速いですよね。ついこの前まで「チャットがすごい」と言っていたのが、エージェントになり、今度はバイブコーディングまで来ました。この流れが速すぎるからこそ、当社のメンバーにも時代の変化についていけるよう、バイブコーディングのスキルを身に付けてほしいと考えています。実は、Claude Codeをあえて選んだというより、バイブコーディングのスキルそのものが目的なんです。現段階では、そのスキルが競争優位性になる。ただ、遅くとも1年以内には優位性ではなくなり、誰もが当たり前に取り組む時代が来ると思っています。
三上様(AIビジネス推進):
現場としても、Claude Codeが前提だったわけではなく、本質的にはバイブコーディング——メンバーがAIを使ってコーディングしていくことが出発点でした。その中で、当時最も知名度や活用事例が多かったのがClaude Codeだったため、「まずはClaude Codeで」という形で探した、というのが背景です。
研修前の空気と、経営層の期待
スパルタ:
研修を告知されたときの、チーム内の雰囲気はいかがでしたか?
三上様(AIビジネス推進):
チームにはAIに長けたメンバーも、そうでないメンバーもいますので、「そもそもClaude Codeって何だろう」「バイブコーディングって?」という反応があったと思います。「これから何が始まるんだろう」という、期待と不安が入り混じったような空気だったかなと思います。
スパルタ:
山口様は、受講者の皆さんにどのレベルまで到達してほしいと考えていましたか?
山口様(上席執行役員):
今回は8名を選抜しましたが、経営コンサルからエンジニアまで、非常に多様な属性のメンバーが集まっています。私自身も参加者の一人でした。それぞれに求めるものは違いますが、全体としては「バイブコーディングって、自分にも簡単にできるんだ」と実感して、どんどん自社や自分の業務で試してみる。そういう状態にしたいと思っていました。
研修プログラム:2日間のハンズオン+2日間のプロジェクト合宿
スパルタ:
「2日間のハンズオン+2日間のプロジェクト制作・発表」という形式でしたが、受講してみていかがでしたか?
三上様(AIビジネス推進):
全体を通して、バランスは良かったと思います。どちらかに偏らず、適切なインプットをして、それをアウトプットするという流れです。メンバーもかなり手を動かして、なにより、1日目では思いつかないようなアウトプットが4日目には出せていた。短期間でスキルアップが図られたと思います。
スパルタ:
今回は最後の2日間を、御社が運営されるホテルでの合宿形式で実施していたのも印象的でした。実際に終えてみて、期待と比べていかがでしたか?
山口様(上席執行役員):
初日は少し専門的な内容から入ったため、ITに馴染みの薄いコンサル系のメンバーは戸惑う場面もありました。ですが、三上からの初日のフィードバックを2日目以降のカリキュラムにしっかりと反映してもらい、2日目以降は十分に軌道修正できて、誰一人脱落することなく最後までやり切れたのは良かったです。4日間の研修ですので、どこかで合宿形式にしたいという話が出て、たまたま日程が合ったのでホテルで実施しました。成果はおおむね期待通りでした。
スパルタ:
三上様は、企画・提供する側として、最も驚いた瞬間はいつでしたか?
三上様(AIビジネス推進):
AIにあまり長けていない経営コンサル系のメンバーが、Claude Codeに全く触れていなかった状態から、最終的には誰もが使えるようなアプリケーションを作れるようになったことです。クオリティーが急激に上がり、しかも短期間で。メンバー本人からも「自分がこんなものを作れるとは思わなかった」という声があった通り、やはりここは驚いたところですね。
実践プロジェクト:経営支援サービスにつながる、現場発のユースケース
スパルタ:
今回のプロジェクト発表の中で、ご自身のもの以外に特に印象に残ったプロジェクトはありましたか?
三上様(AIビジネス推進):
戸塚の診断士マッチングシステムです。山口が立ち上げた経営支援プラットフォームにおいて、連携する中小企業診断士は1,500名にも上ります。この中から案件に最適な人を選ぶには時間がかかり、従来30分かかっていた業務を、今回Claude Codeで作成したアプリケーションでは5秒で上位10名を推薦する形にまとめていました。印象的だったのは、コンプライアンスの判定を全部AIに任せず、AIは検出、判断は人と割り切っていた点です。研修で学んだ技術を、そのまま実務の制約に合わせて設計に落とし込んでいました。
スパルタ:
戸塚様の発表を聞いて感じられたことや、三上様ご自身への気づきや影響はございましたか?
三上様(AIビジネス推進):
気づきとしては、AIを使う設計で本当に難しいのは技術ではなく、線引きのほうだということですね。我々はお客様にITを提案する立場ですので、どうしても「どこまでシステムで自動化・効率化できるか」という話になりがちです。ただ実際に価値が出るのは、AIに任せる範囲と、人が責任を持つ範囲を業務ごとに引き直したときなんですよね。特にコンプライアンスや与信判断、契約審査のように、間違えたときの影響が大きい領域では、この設計思想がそのまま使えます。技術の話ではなく業務設計の話としてAIを語れるようになったことで、実際の業務でAIをどう使うかという意識が変わりました。ここが私にとっての一番の収穫です。
戸塚様のプロジェクトの主要機能
スパルタ:
お話にあった戸塚様のプロジェクトは、山口様が担当されている「経営支援サービス」に関係するものですよね。山口様から見て、このプロジェクトはいかがでしたか?
山口様(上席執行役員):
私が担当する経営支援サービスのユースケースです。各企業の課題を担当の営業がキャッチアップし、その課題を解決できる中小企業診断士の専門性とAIがマッチングして、お客様にアテンドする。その業務プロセスを自動化したユースケースで、これは良かったなと思います。
意識の変化と、「非エンジニアでも作れる」という手応え
スパルタ:
三上様、今回の研修を通じて、AIに対する考え方は変わりましたか?
三上様(AIビジネス推進):
AIはこれまでチャットや生成AIがメインで、どうしても“人の補助”というイメージがありました。でも、実際の業務をとらえて業務を変えていくという観点で見ると、業務そのものを変えられる、非常にパワーのある手段だなと感じました。単なる補助ではなく、業務と合わせて考えると、非常に有用な手段なんだ、と考えが変わりました。
スパルタ:
「非エンジニアでも自分で作れる」という可能性は感じられましたか?
三上様(AIビジネス推進):
大いに感じました。もともと勉強はしていたつもりでしたが、あれだけのアウトプットを全くAIの補助なしで作るとなると、とても無理だろうと思います。AIの力を使ったことで、自分が作れるものの幅が大きく広がりました。
これからの人材像と、FDE育成・組織への展開
スパルタ:
山口様、今後企業が求める人材像はどのように変わっていくとお考えですか?
山口様(上席執行役員):
大きく変わると思います。これまでは、いわゆる高学歴でハイスペックな人材が十分に活躍できる環境がありました。もちろん今後もそうした人材は求められますが、それ以上に課題を発見する能力——「なぜこんなことをやっているのだろう」という気づきを常に持てる人材が求められます。解決すること以上に、“問いを立てる”能力が必要になっていくと考えています。
山口様(経営支援サービス 兼 AIビジネス推進プロジェクト 上席執行役員)
スパルタ:
最近注目されているFDE(Forward Deployed Engineer:フォワード・デプロイド・エンジニア)については、どのようにお考えですか?
山口様(上席執行役員):
まずは局所的なFDEとして、お客様の業務を理解し、課題をバイブコーディングで自動化して解決する、そうしたビジネスができるようになればと考えています。ただ、FDEはそれだけではなく、一つひとつの自動化スキルを共有し、新たなサービスとして提供してマネタイズするところまで行ってこそFDEだ、という定義もあるようです。そこまではまだ構想しきれていないのが実情ですが、FDEの育成と展開は、これからの重要な方向性として強く意識しています。
スパルタ:
三上様は、今後組織内でClaude Codeの活用をどう広げていきたいとお考えですか?
三上様(AIビジネス推進):
まずは、社内の業務課題をClaude Codeでどう解決していくかに真っ先に取り組みたいですね。その過程で、そもそもClaude Codeとは何なのか、何ができるのかという認識を社内で変えていって、最終的にはそれを使ったビジネスを広げていけたらと思っています。
メッセージ:一歩踏み出せていない企業・個人へ
スパルタ:
最後に、これからClaude CodeやAI人材育成を検討している企業に向けて、メッセージをお願いします。
山口様(上席執行役員):
この2、3年の急激な生成AIの成長で、「AIを導入するかどうか」で迷っている企業は、もうあまりいないと思います。一方で、Claude Codeなどのバイブコーディングを導入するかどうかで迷っている企業は非常に多い。しかし数年後には、それも当たり前になっているはずです。だからこそ、“導入を検討する”のではなく、“どことパートナーシップを結んで導入を進めていくか”を決める時代なのだと思います。
三上様(AIビジネス推進):
もう本当に、まずは触ってみることです。Claude Codeであれば、本当に小さなものでいいから作ってみる。そうすると「AIでこんなことができるんだ」という見識が少しずつ広がっていきます。その体験をどんどん積み重ねていくのが一番大事。まずは自分で手を動かして、作ってみることが、最初の一歩だと思います。
まとめ:“導入”の先へ、日本企業のAI活用は次のステージへ
大塚商会様の取り組みは、AI活用が「導入するかどうか」の段階から、「バイブコーディングをどう使いこなすか」の段階へと移っていることを示しています。経営コンサルからエンジニアまで、多様なメンバーがわずか4日間で“誰もが使えるアプリ”を作り上げたことは、「非エンジニアでも、現場を知る人だからこそ作れる価値がある」ことを鮮やかに物語っています。
経営支援のマッチング業務の自動化。そして、受講者自身が「自分がこんなものを作れるとは思わなかった」と語る、可能性の実感。これらは特別なIT人材がいたからではなく、自分の業務を起点に、実際に手を動かしてアウトプットまでやり切ったからこそ生まれた成果です。
AIの進化が加速する今、問うべきは「導入するかどうか」ではなく、「どこと、どう進めるか」。大塚商会様のように、現場の課題から小さく始めて実際の成果につなげていくことこそが、これからのAI活用において最も実践的な一歩と言えるでしょう。
TeamSpartaの実践型AI・Claude Code研修を、ぜひご検討ください。